研究概要 |
最近、誘電体を用いたデバイスは,小型化され,使用周波数が高くなっている。このため,微視的な分極応答の取得が出来,高周波測定で頻繁に生じる共振現象を回避し,かつ周波数可変な測定法の開発が必要である。 本研究では,高周波領域における誘電体・微視領域の誘電率測定装置の開発を行った。これまで,高周波領域における誘電体・微視領域の誘電率測定は,同軸管共振器に取り付けられたプローブを試料に接触させて,試料の静電容量による共振周波数のシフトを利用して測定が行われて来た。しかし,この測定方法では,本質的に共振周波数以外での測定は不可能であった。本研究では,新たに測定用単針を試料と接触させずに試料からの反射マイクロ波を解析して測定を行った。 試作したマイクロ波非接触プローブを誘電体試料に近づけると,試料表面で、マイクロ波の位相が90°になった時,試料がマイクロ波を透過(一部は吸収,試料裏面で反射)するようになり,反射強度に最小値が現れることを見出した。この最小値を用いて,試料の誘電率の計算方法を考案し,確かな精度で測定できることを確認した。 この研究は,国内外で10回以上の発表及び,6本以上の論文の公表に至り,結果として活発な研究活動を行えることが出来た。 現在は,最終的な課題である典型的な強誘電体であるチタン酸バリウム(BaTiO_3)の誘電緩和メカニズムの調査を予定している。BaTiO_3は,Floating Zone法により単結晶を得ており,上記測定方法で,周波数を変え,BaTiO_3・微視領域の誘電率測定の取得が可能となった。 しかし測定は,高い分解能と測定確度を保持しながらの測定であるので,指導原理として,Kirchhoffの回折理論を用いて同軸線開口部からの電界強度や分解能について解析を始め,実験は,補助的にBaTiO_3系積層セラミックスキャパシタのミクロ構造の測定を行っている。BaTiO_3の微視的誘電率分布も含め,研究成果は,2006年日本セラミックス協会・年会と応用物理学会春季講演で発表を行う予定である。
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