研究概要 |
本年度は、硫化物とオリゴマーのハイブリッド化における反応プロセスの解明を行い、得られたハイブリッド電解質のイオン伝導機構について検討した。ラマン分光測定の結果から、70Li_2S・30P_2S_5ガラスの局所構造は、PS_4^<3->やP_2S_7^<4->から構成されていることがわかった。このガラスとオリゴマーとして1,4-butanediolを反応させるとP_2S_7^<4->のピークの強度が減少していることから、硫化物ガラス中のP_2S_7^<4->とオリゴマー末端のヒドロキシル基が反応してハイブリッド化していることが示唆された。ガラス転移温度における導電率から、1,4-butanediolを2mol%添加して得たハイブリッド電解質のデカップリングインデックス(R_τ:伝導緩和時間に対する構造緩和時間の比)を求めるとR_τ=12.6となり、ガラスと同等の値を示すことがわかった。また直流分極測定により、ハイブリッド電解質のリチウムイオン輸率はほぼ1であることを確認した。以上の結果から、イオン伝導ガラスとオリゴマーのハイブリッド化を行っても、ガラスの高いデカップル性が維持され、ハイブリッド電解質はシングルイオン伝導性を示すことがわかった。作用極にステンレス板、対極にリチウムシートを用いた全固体二極式セルを用いてサイクリックボルタンメトリーを行った結果、ハイブリッド電解質はガラスと同等の電位窓を有しており、リチウムの溶解・析出が可逆的に生じることがわかった。負極に金属インジウム、固体電解質にハイブリッド材料、正極にLiCoO_2を用いた全固体電池を試作したところ、充放電が可能であり二次電池として作動することを確認した。
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