研究概要 |
磁場中で熱電素子の性能を向上すべく、本年度は直径1〜100μm,長さ1mm程度のBi製ワイヤーをガラスで束ねたマイクロワイヤー素子を用いて、熱電性能(ゼーベック係数,抵抗率)の測定を行った。磁場中では素子のアスペクト比が大きいほどゼーベック係数の改善率が高く、また抵抗率の上昇率が低いことが報告されていた。しかしながら、これらの報告はバルク素子を用いての結果であり、アスペクト比が10以上を持ったマイクロワイヤー素子では、その挙動は不明であった。先に述べた電極接続技術を用いて磁場中でのゼーベック係数を測定したところ、期待通り、アスペクト比の大きな素子では同じ磁場強度でもその改善率が高く、また磁場中での抵抗率の上昇率も抑制することができることが確認された。磁場中のゼーベック係数と抵抗率で記述できるパワーファクターを用いて磁場中での性能評価を行った。アスペクト比が大きい素子であるほど、パワーファクターの改善率は高く、また最適磁場は高磁場側にシフトし、広い磁場範囲でパワーファクターの改善が見られた。抵抗率の逆数で表される伝導率とゼーベック係数の関係で、磁場中のパワーファクター上昇についての解析を行った。これによって、固体中のキャリアの移動度が大きいことに由来しゼーベック係数が無磁場で大きいほど、その改善率が顕著であることを示した。これはサンプル中の結晶方位に大きく依存すると考えられ、今後の素子作製の方針となる。また、磁場中でのゼーベック係数ならびにネルンスト係数を測定し、その温度依存性を明らかにした。
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