研究概要 |
本研究は,セラミックスの脆性破壊とそれに伴い生じる光子・電子・中性粒子などの粒子放出現象(フラクトエミッション)の相関関係を明らかにし,脆性破壊の素過程を原子レベルで解明することを目的としている。本年度は、研究実施計画に従い以下のような研究を行った。 1.ナノ秒時間分解フラクトエミッション計測システムの構築: 光電子増倍管、二次電子増倍管を有する既存の超高真空フラクトエミッション計測装置に,計測スタートトリガーとして用いる試料破壊検知システムと四重極質量分析計を新たに付加した。これら4種の信号を,4CHデジタルオシロスコープを用いて10^9 signals/秒で同時計測することにより,フラクトエミッションのナノ秒時間分解計測が可能となった。このように、デジタルオシロスコープを用いることにより、試料が破壊する瞬間、すなわちマクロな亀裂進展開始から1ミリ秒の間に生じたフラクトエミッションだけでなく,亀裂進展開始の1ミリ秒前からもその現象を検出することが可能なシステムを構築することができた。 2.多結晶・単結晶マグネシアのフラクトエミッション時間分解計測: 上記の装置を用いて,多結晶および単結晶マグネシアのフラクトエミッションをナノ秒時間分解計測した。いずれの試料においても,マクロな亀裂進展開始から電子・光子が放出されることが明らかとなった。一方,亀裂進展開始前においても電子・光子放出が観測される場合があり、単結晶マグネシアの場合は亀裂進展開始の数ミリ秒前から、多結晶マグネシアの場合は数百ナノ秒前から既に光子放出が生じていることが明らかとなった。 3.粒界破壊モデルとしてのセラミックス双結晶作製条件の検討: 様々な論文・資料を検討した結果、マグネシアは2480℃,アルミナは1900℃で,それぞれの単結晶同士を加熱接合することにより,無加圧で双結晶を作製できることが分かった。
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