研究概要 |
液体急冷凝固結晶制御装置で得た強磁性CoNiGa合金薄帯(厚さ40〜60μm)にたいして,双晶磁歪に大きな役割を演じるマルテンサイト(M)晶を詳細に観察した.特に,前年度の透過電顕観察で熱誘起したM晶の交差部で逆双晶変形が起きるために内部双晶が完全に消失するdetwinning現象が観察されたので,この現象が透過電顕観察で得られた固有のものであるのか否かを検討した.薄帯のT-L断面及びT-W断面(T:厚さ方向,L:長さ方向,W:幅方向)に現れる結晶粒上には,板状M晶が交差し市松模様ともいえる幾何学的模様のコントラストが走査電顕での二次電子像で得られた.また,試料の冷却・加熱に伴って出現・消失するM晶を微分干渉システム付き光学顕微鏡で観察したところ,異なる方向から成長するM晶の衝突と交差が確認された.走査電顕及び光学顕微鏡で得られた像は,透過電顕観察で確認したdetwinningに対応するものであると結論付けた.一方,同組成のバルク材ではdetwininngが認められていないので,薄帯製造時に不可避的に導入される圧縮ひずみあるいは応力に起因して発現する強磁性CoNiGa合金薄帯での特異な現象と考察した.強磁性形状記憶合金の双晶磁歪量の大小は,印加する磁場はもちろんのこと,材料に内在する双晶の性質(双晶の生成量,双晶面,双晶界面の易動度など)に大きく影響されることがわかっているので,detwinning現象によってM晶の交差部で内部双晶が完全に消滅した本研究試料の状態では巨大磁歪を得がたいことが容易に予測できる.液体急冷凝固結晶制御装置で得た強磁性CoNiGa合金薄帯には上述のような問題点が含まれていたが,薄帯製造条件,例えば,溶湯温度,ロール周速度(すなわち,冷却速度)などを適宜制御することでこれらを回避できると考えている.
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