研究概要 |
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)一方向材をリブに用いた先進グリッド構造において,昨年度に実施した衝撃試験の結果,繊維の局所座屈でリブの圧縮側に亀裂が入ることがわかった.そこで本年度は,そのような損傷に対応できるように,三次元梁要素に線形拘束条件式を組み合わせた有限要素解析手法を確立した.その結果,損傷を有するグリッド構造の各リブにおけるひずみの測定結果を,本解析手法で正確に再現することが可能となった. 次に,各リブに埋め込んだFBGセンサで計測されたひずみ分布から,損傷の位置を推定する方法を構築した.まず,無損傷の状態で一点に集中荷重を掛け,各リブのひずみを計測する.次に,数本のリブに切り欠きを入れて損傷を模擬し,同様にして一点集中負荷下で各リブのひずみを計測する.そしてその両者のひずみ差の分布に対し,確率統計的手法を適用する.その前提として,健全なリブのひずみ差は計測誤差程度であるため正規分布に従うと仮定する.そして,n個の全データに正規分布を当てはめ,各データの検定値を計算し,検定値の大きなものから順に,あらかじめ設定しておいたk個分だけ取り除く.その後,そのk個の中から検定値の小さな順に,残りの健全データに加えて正規分布を当てはめ,新たに加えたデータの検定値が有意水準αでの閾値を越えているかどうか調べ,異常値診断を行う.このようにして損傷診断を行った結果,損傷リブの位置を適切に検出することが可能となった. さらに,1本の光ファイバに複数のFBGセンサを書き込んで,グリッド構造に埋め込む際,各FBGセンサへの波長の割り当てを最適に行うため,有限要素解析に基づいた波長最適化アルゴリズムも構築した.
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