研究概要 |
本研究は、SSBL方式水中音響測位においてスペクトラム拡散技術を用い、海中探査機等の測位対象と母船等の測位基準の間での情報伝送を行うことで、測位の高精度化、高機能化を実現することを目的としている。 平成18年5月、及び平成19年2月末〜3月初に、海洋研究開発機構の研究船「かいよう」を用い、駿河湾にて実海域実験を行った。深度約1,000mの海底に送、受波器及び送受信装置を係留し、係留系と船底に装備されている送受波器の間で、音響信号の送受信を行った。音響信号の周波数帯域は12±3kHz、信号はコード長15,31,63のM系列コードを用いたDSSS信号である。係留系の真上から水平方向に半径1,000以内の範囲で船位を変えることにより、音波の伝搬路特性を変えて実験を行った。実験装置からの反射と思われる高レベルのマルチパス波よりも、海底反射と見られる長遅延のマルチパス波のシンボル間干渉が重大な影響をもたらしていることがわかった。このマルチパス波の遅延がシンボル周期の整数倍のに近い場合、直接波の2、3割程度のマルチパス波によって品質劣化が顕著になることを実験とシミュレーションにより確認した。2、3月の実験においては、係留系に対する測位の実証実験データを取得した。30bit分の情報を含んだ測位パルスを1秒毎に送信する方法と、数10秒の長い変調波を送信する方法のデータを得た。また、係留系側にも受波器アレイを構築し、係留系側での測位を想定したデータも取得した。実験結果とシミュレーションにより、水中探査機のINSやDVLデータなどの短時間の高精度な軌道データを測位パルスとともに送信して測位計算に利用することにより、数mのオーダーで測位できることを確認した。この結果から、前年度のデータで得た海中の音速プロファイルの計測誤差や空間的、時間的変動が無視できないオーダーとなる。
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