研究課題
若手研究(B)
哺乳類では、雌(XX)雄(XY)間でのX染色体の遺伝子量を補正するために、雌で2本のX染色体の一方の遺伝子発現を一括して抑制している(X染色体不活性化)。不活性化はヘテロクロマチン化を伴う染色体レベルの遺伝子発現抑制機構であり興味深い現象であるが、不活性化は発生初期に母体内で起こるため現場を捉えることが困難であり、in vitroモデル系の必要性が高まっている。本研究では不活性化の新しいモデル系の確立と共に不活性X染色体の解析を試みた。不活性化は、将来不活性化されるX染色体上のXist遺伝子が発現することによって始まり、この遺伝子の転写産物は機能性RNA分子として不活性化されるX染色体上に局在するようになる。これに同調するように不活性化されるX染色体のクロマチンのヒストンは、その全域に渡ってヘテロクロマチン様の修飾(ヒストンH3の9番、27番リジン、ヒストンH4の20番リジンがメチル化される)を受け、X染色体は不活性化されていくと考えられている。従って、Xist遺伝子の発現、Xist RNAの不活性X染色体への局在やヒストンの修飾を調べることで不活性化が誘導されたかどうかを検証できる。そこでオリゴDNAをプローブに用いたFluorescence in situ hybridizationによりXist RNAの局在を検出できるようにし、クロマチン免疫沈降法により活性X染色体と不活性X染色体のヒストンの修飾状況を調べた。その結果、H3の9番リジンとH4の20番リジンは不活性X染色体上の遺伝子の全域で均一にメチル化されているのに対し、H3の27番リジンは非常に限られた部位でのみメチル化されていることが明らかになった。これらは活性Xでは見られなかったことから、今後は、これらをマーカーとして膜透過処理細胞を用いた不活性化の新しいモデル系の確立を試みる。
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Nature Genetics 36・12
ページ: 1296-1300