研究課題
若手研究(B)
天然に於いてバクテリアは、通常「死にもせず殖えもせず」と云う飢餓条件下に置かれているが、此の様な条件下では"adaptive mutation"や"adaptive amplification"と云った遺伝子変異が誘導される事が知られている。私達は、大腸菌の増殖相が対数期から静止期に遷移するに際し、非相同的組換えとDNA二重鎖切断が誘導される事、及び、アルキル化したDNA(3-メチルアデニン等)を修復する遺伝子(tag又はalkA)の変異株では、此れ等が野生株に比べて高頻度に起こる事を見出し、「増殖相が静止期に入ると、DNAのアルキル化が促進され、其の結果、DNA二重鎖切断が生じ、組換えが起こる」と云う《モデル》を提唱した。此処で私達は、λbio特殊形質導入ファージ(λSpi^-ファージ)(λファージのDNAの一部が欠失し、其の代わりに大腸菌染色体の一部が挿入された様な組換えファージを謂う)の出現頻度を以て非相同的組換えの頻度と定義したが、今回、私達は、Fプラスミド上に於ける欠失を定量的に検出する系(Yamaguchi et al., 2000)を用い、"fluctuation test" (Luria & Delbruck, 1943)を行った処、増殖相が対数期から静止期に遷移するに際し、Fプラスミドの欠失頻度が有意に上昇する事を見出し、此の現象が、用いた実験系に依らず検出される事を示した。従って、大腸菌の増殖相が対数期から静止期に遷移するに際し、非相同的組換えが誘導される事が《確証》された。更に、此の系に於いてもアルキル化DNA修復遺伝子の変異株では増殖静止期に於ける非相同的組換えの頻度が高くなる事から、アルキル化DNAが増殖静止期に誘導される非相同的組換えの原因である事が《確証》された。本研究の遂行に依り、飢餓条件下に於いては、"adaptive mutation"や"adaptive amplification"のみならず非相同的組換えが誘導される事が示された。非相同的組換えはゲノム再編成の原因となるので、此の様な条件下に於いてはゲノムの再編成が起こる可能性が考えられる。
すべて 2004 2001
すべて 雑誌論文 (2件) 産業財産権 (1件)
J.Biol.Chem. 279
ページ: 45546-45555
Adv.Biophys. 38
ページ: 3-20