研究概要 |
植物のゴルジ体には,機能的に異なる複数の区画が存在しており,そこに局在しているタンパク質の組成も大きく異なっている.このことを利用し,ゴルジ体の各領域を別々に可視化した植物体の作成を試みた.ゴルジ体シス領域に局在するAtErd2とAtSed5,およびトランス領域に局在するsyalyl transferase (ST)に,GFP, Venus(改変型YFP), mRFPといった様々な波長特性を持つ蛍光タンパク質を融合させ,それを発現する形質転換シロイヌナズナを作成した.これらいずれの形質転換シロイヌナズナにおいても,融合タンパク質は細胞質中に散在するドット状のオルガネラに局在し,それぞれが良好なゴルジマーカーとして使用できることが確認された.さらにシス領域のマーカー(AtSed5)とトランス領域のマーカー(ST)が,近接しながらも空間的に異なる区画に局在することも確認された.このうち,GFP-AtErd2を発現しているものをEMS処理し,M2個体を共焦点レーザー顕微鏡により網羅的に観察することにより,ゴルジの形態異常を指標に変異体のスクリーニングを行った.その結果,ゴルジ体が凝集するもの,ゴルジ体の大きさが変化するもの(大きくなるものも小さくなるものも存在する),ゴルジ体から連続してチューブ状の構造が観察されるもの等,多くのゴルジ形態異常変異体の単離に成功した. 一方,得られた形質転換植物を用いてゴルジ体のダイナミクスについても解析を行った.その結果,ゴルジ体はシスとトランスの位置関係を常に一定に保ちながら,植物細胞内をアクチン繊維に依存して移動していることが明らかとなった.
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