研究概要 |
(1)生後2日齢と15日齢のマウス子宮、膣との間でいくつかの遺伝子の発現と局在を調べたところ、子宮ではBMP2,hoxa10,hoxa11の発現が、膣ではBMP4,hoxa13の発現が高かった。またこれらの遺伝子は、主に間質細胞において発現していた。このことは、出生直後のマウス子宮、膣では、形態形成や器官の成長に関与すると思われる遺伝子群がそれぞれ異なって発現していることを示している。さらに、出生直後の合成エストロジェン投与によりいくつかの遺伝子の発現量は有意に減少していた。 なお、これらの結果はサンディエゴで開催されたアメリカ内分泌学会第87回大会で発表した。 (2)上皮-間質間相互作用の解析を行うために、マウス子宮、膣間質細胞の初代培養系を確立した。この培養間質細胞はエストロジェン受容体αを発現しており、エストロジェンに反応して細胞増殖が促進される。このとき、細胞増殖を引き起こすエストロジェンの濃度は子宮、膣でそれぞれ異なっていた。このことは、子宮、膣間質細胞におけるエストロジェンに対する反応性が異なっていることを示している。さらに、ビスフェノールAを培地中に加えても細胞増殖が有意に促進されることが明らかとなった。培養間質細胞をマウスの腎臓皮膜下に移植し、宿主にエストロジェンを投与したところ、移植片のDNA合成が促進されたことから、培養間質細胞は生体内でもエストロジェンに反応して増殖することがわかった。さらに、上皮組織と培養間質細胞とを組み合わせて移植すると、正常な子宮、膣に似た組織像を示し、宿主の性周期に依存した上皮の形態変化が見られた。したがって、この培養間質細胞は上皮細胞の増殖を引き起こす能力を保持している事が明らかとなった。(原著論文として発表済み)
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