研究概要 |
ビドーカカトアルキKaroophasma biedouwensis及びモンタギューカカトアルキHemailobophasma montaguensisの卵黄形成過程を光学顕微鏡と透過型電子顕微鏡を用いて観察・記載した。両種の卵黄形成期の卵母細胞質内には,脂肪性顆粒とタンパク質性卵黄の蓄積が認められ,グリコーゲン顆粒と思われる構造は認められなかった。タンパク質性卵黄の蓄積に先立ち卵母細胞質内に生じる脂肪性顆粒は,ピノソーム,内部の電子密度が異なる2種類の小胞,ミトコンドリア,滑面小胞体が関与する複雑な過程を経て合成される可能性が示唆された。一方,タンパク質性卵黄の形成は,典型的な無栄養室型卵巣をもつ他の多新翅類昆虫と同様に,卵母細胞が微飲作用によって取り込んだ卵黄前駆体を用いて合成する方法によることが明らかになった。卵黄形成が進行すると脂肪性顆粒の割合が徐々に減少し,卵膜形成期の卵母細胞においては,タンパク質性卵黄の卵母細胞質内に占める割合が著しく高くなった。 モンタギューカカトアルキの卵膜の微細構造を透過型電子顕微鏡を用いて観察した結果,すでに卵膜の微細構造が記載されているビドーカカトアルキと同様に,非常に薄い最外層,厚く複雑な構造からなる外卵殻,均質な内卵殻の3層からなる卵殻(コリオン)と,非常に薄い卵黄膜からなることが明らかになった。モンタギューカカトアルキの外卵殻は内外に向いた突出部,内側を向いた外卵殻の突出部が互いに連絡して形成される空間部からなり,内卵殻には多数の小孔が認められた。これらの特徴はおそらくビドーカカトアルキとモンタギコューカカトアルキの両種が属するミナミカカトアルキ科に共通して認められる特徴であると思われる。
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