研究概要 |
・ウミホタルにおける2つのengrailed遺伝子の発現解析 前年度,各体節の後方で発現し体節性を示す分子マーカーとしてよく知られるengrailed遺伝子の単離を,ウミホタルVargula hilgendorfii胚において試みたところ,遺伝子重複により生じたと考えられる2つのホモログ(Vh-en-aおよびVh-en-b)が得られた.そこでin situ hybridization法によって付属肢形成期の胚(40〜50%胚期)においてそれぞれの発現パターンを調べた結果,胚期に同調的に形成される5対の付属肢原基に加え,将来形成される付属肢に相当する計7本の縞状の発現パターンが見られた.またVh-en-bでは,さらにその後方にも2本の縞状の発現パターンが見られ,この胴部末端領域には付属肢はなく体節性を示す構造も見られないため,この発現パターンは「痕跡的な」腹部体節を示すものと考えられる.以上の結果の一部を日本節足動物発生学会第41回大会,Sixth International Crustacean Congress,および日本動物学会第76回大会で報告した. ・ウミホタルにおけるHox遺伝子群の単離および発現解析 Hox遺伝子群のホメオドメインに対するuniversalなdegenerateプライマーを用いたRT-PCR法を行ったところ,数種類の異なる塩基配列をもつcDNA断片が得られたため,RACE法によるクローニングを試みた.その結果,いまのところいずれも約1kb長のlabial遺伝子およびcaudal遺伝子のホモログが得られ(Vh-labおよびVh-cad),それぞれについてin situ hybridization法による発現パターンの解析を行った.50%胚期においてVh-labについては他の甲殻類と同様に第二触角で発現が見られ,Vh-cadについては上述の「痕跡的な」腹部体節で発現が見られた.
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