研究課題
若手研究(B)
本研究は哺乳動物の系統進化における生物学の具体的な問題を解決しながら、データ解析法の開発を進めている。昨年末世界中多くのメディアで「揚子江カワイルカ絶滅」が報じられた。私はこの貴重な生物の全mtDNA塩基配列決定に成功し、アマゾンカワイルカ、ガンジスカワイルカを含むカワイルカの系統関係および分岐年代の推定を行った。最尤法による解析を行う際に、扱う生物種の数が多いと可能である系統関係を表す系統樹の数は爆発的に増え、トポロジー空間を網羅的に探索することは困難になる。MCMC法の過程で生成されるトポロジーを保存しておくことを考えた。最終的に収斂されたそのトポロジー・セットについて最尤法解析を行なうことによって、不可能であった系統樹トポロジー探索を可能にした。新しい提案はクジラ目におけるカワイルカの系統関係の推定に用いられ、最尤系統樹の候補になるトポロジーの数を絞ることができた。また蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列の解析において、コドン内の塩基間の相関を無視した解析の欠陥を指摘し、コドン置換モデルの有効性を明らかにした。結果として:カワイルカ類は多系統であり、南米に生息するアマゾンカワイルカとラプラタカワイルカが単系統群を形成し、ガンジスカワイルカがほかのカワイルカや海洋性イルカから先に分かれたことがミトコンドリアDNAによる解析で確認され、共同研究でSINE insertions法によって構築されたクジラ類の系統樹と一致になった。更にカワイルカの分岐年代を推定した。複数の化石証拠によるcalibrationを取り入れ、各系統で異なる進化速度などの考慮を認識する解析法を用いたため、安定した結果が得られた。マッコウクジラに続いて、ほかの歯クジラから先に分かれたガンジスカワイルカの分岐年代は3000万年前で、南米に生息するアマゾンカワイルカとラプラタカワイルカの分岐年代は1600万年〜2300万年だったとの結論になった。また東工大のグループとの共同研究でヒゲクジラ内部系統やペンギン目に関する系統解析も行って、その結果を国際学会誌に掲載した。更に中国上海復旦大学生命科学院の研究グルプと共同でSARSの伝播機構を探る研究を行い、その研究結果は学術論文で発表した。
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