研究概要 |
転写因子PU.1を含む転写調節複合体は多くのメンバーからなっており、その複合体の形成因子の相違により転写調節を正または負に制御していることが我々のこれまでの研究のみならず、国内・外の他の研究者によっても明らかとなってきている。昨年度は、PU.1と他の転写因子との複合体形成におけるクロストークを解明する一端としてPU.1との複合体の構成成分の単離・同定を試み、PU.1はDNAメチル基転移酵素DNMT3s(Dnmt3a/b)と複合体を形成することでプロモーター領域のCpGアイランドをメチル化し転写抑制への寄与を示してきた。 本年度はさらに、その標的遺伝子として細胞周期関連遺伝子であるp16INK4Aを同定しその転写抑制機構についてさらに詳細な解析を行った。p16遺伝子の転写調節(プロモーター)領域をLuciferase遺伝子の上流につないだレポーターベクターを用いた解析および、in vivoにおけるp16プロモーター領域のCpG配列のメチル化状態の解析により、PU.1とDNMT3s共存在下においてp16プロモーターのCpG配列の高メチル化とその結果に伴うp16遺伝子の転写レベルでの発現抑制が起こっていることを見出し報告した(Oncogene, In press)。これらの知見はPu.1による転写抑制が、従来申請者らが示してきたCBPやHDAC1といった転写共役因子群との相互作用によるヒストンのアセチル化・脱アセチル化によるクロマチン構造の変化(Oncogene 20,6039-6047,2001)だけでなく、プロモーター領域のメチル化制御というエピジェネティックな制御機構が重要な要因のひとつであることを新たに提示した。さらにこのPU.1の転写共役因子群との結合にはPU.1自身の修飾により嗜好性が存在することを見い出した(BBRC335,337-343,2005)。
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