研究概要 |
イネゲノムよりmPingと名付けた新規のMITEを単離し、葯由来カルスにおいてmPingが転移することを明らかにした(Nature 421.167-170)。一般的な特徴としてMITEは、全長が500bp以下であることから、転移に必要な酵素をコードするキャパシティーはない。そのため、MITE単独では動けない。それでは、mPingを可動させる転移酵素はどこから供給されるのであろうか?この因子を同定することは、極めて重要である。本研究では、mPingの転移を制御する自律型のトランスポゾンの同定を行い、その機能解析を行った。 Pingは日本型品種に存在し、インド型品種には存在しない。一般的にインド型品種のイネに、遺伝子を導入することが非常に困難であるので、日本型品種の中でも例外的にPingが存在しない品種の台中65号を使用し、アグロバクテリアを介してPingの遺伝子導入を行った。台中65号の葯由来カルスにおいては、mPingの転移が全く見られなかったが、Pingを導入した台中65号の葯由来カルスにおいては、mPingの転移が見られた。この結果、mPingの転移を制御する自律型のトランスポゾンは、Pingであることが明らかとなった。 Pingには、2つのORF(ORF-A,ORF-B)が存在すると考えている。ORF-Aは、特に他の遺伝子との相同性はない。しかながら、本研究においてゲルシフトアッセイによりDNAと結合しうる領域であることが明らかとなった。一方、ORF-Bは、トランスポゼースに特徴的な配列をコードしている。しかしながら、詳細な機能は、解っていない。そこで各ORFを破壊した、Pingのバイナリーベクターを作り、アグロバクテリアを介して台中65号に遺伝子導入を試みている。
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