研究概要 |
本年度の研究では、a.花きの鑑賞によって引き起こされる被験者の生理・心理的応答の解析、b.高齢者福祉施設における園芸プログラムの評価を行った。また、c.平成16、17年度の研究成果をとりまとめ、花きのアメニティ効果の総合考察を行った。 a.花きの鑑賞によって引き起こされる被験者の生理・心理的応答の解析 切り花(キク、バラ、ユリ)とハーブ(ラベンダー,ローズマリー,バジル,ブラックペパーミント,フルーツセージ,カレープラント)の2種類を対象として実験を行った。切り花による応答のうち前頭部脳血流量は、バラでは鑑賞開始後速やかに増加したが、キクでは増加速度が遅く、ユリでは逆に減少していた。瞳孔対光反射からは、バラでは交感神経系が、キクでは副交感神経系活動を賦活し、ユリでは逆に交感、副交感神経系活動を抑制していた。また、全てのハーブでは脳血流量は減少していたが、その程度は種類によって異なっていた。このように花きやハーブが脳、循環器に与えることが示された。 b.高齢者福祉施設における園芸プログラムの評価 認知症の高齢者を対象に簡便に行える園芸プログラムの評価方法を開発した。運動機能と精神機能にかかわる評価項目を抽出し、5段階で評価を行った。評価の試行を行った結果、施設管理者が認識していない潜在的能力が園芸プログラム中に発露する場合がみられた。廃用性機能低下の防止に、多様な能力を要求される園芸プログラムの有用性が示唆された。 c.研究成果のとりまとめ 複数の実験、調査によって花きの鑑賞が、被験者の心身のストレス状態の緩和や能力の発揮に有効であることが示された。また、花きの生理・心理的効果は種類によって異なっていた。利用者の求める機能に応じた適切な種類を選択することで、花き類はより有効に利用可能である可能性が示された。
|