研究課題
若手研究(B)
土壌細菌Bacillus thuringiensis(BT)が産生する毒素は、現時点において最も有効な害虫防除資材である。害虫幼虫によって摂食されたBT毒素は、消化管(中腸)に作用して破壊する。一方、害虫幼虫の中腸には組織を保護する囲食膜が存在しており、BT毒素の侵入を阻んでいることが示唆される(Hayakawa et al.,2006)。囲食膜を効率良く破壊することができれば、BT毒素の殺虫スペクトルを拡大するだけでなく、既存の殺虫剤の効果も増強できると考えられる。本研究では、前年度に引き続き囲食膜を破壊する酵素(カイコ核多角体病ウイルス由来のキチナーゼとシロイチモジヨトウ顆粒病ウイルス由来のエンハンシン)の大量調製を試みた。しかし大腸菌を用いた発現系(pGEX-6P-1)では発現蛋白質のほとんどが不溶化し、5L培養から100μg程度の酵素しか得られなかった。また、得られた酵素をアカイエカ幼虫に投与しても明らかな影響が見られなかった。同時に昆虫細胞とバキュロウイルスベクター(Bac-to-Bac expression system)を用いた発現を試みたが、生物検定に必要な発現量を得ることができなかった。この課題に関して、酵素を結晶化させることで安定発現(BT毒素のシステム)させる系の構築を継続して進めている。本研究では、BT毒素(Cry1Aa)が標的組織(中腸刷子縁膜、BBM)に挿入されるメカニズムに関する解析も行った。BBMと反応させたCry1Aaを強力な蛋白質分解酵素(Pronase)で処理し、膜に保護され、分解を免れたペプチドを解析した結果、Cry1Aa全体がBBMに挿入される新しいモデル(Buried Dragon Model)を提案するに至った(Tomimoto et al.,2006)。
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