研究課題
若手研究(B)
植物に広く存在する三価の鉄と二価金属のキレーターであるニコチアナミンを合成する酵素、ニコチアナミン合成酵素(NAS)の遺伝子は世界ではじめて当研究室でオオムギから単離された。金属過剰条件下におけるニコチアナミンの役割を調べるため、アグロバクテリウムを用いた遺伝子導入により、この遺伝子を過剰発現するシロイヌナズナとタバコを作成した。これら形質転換体の種子を鉄、亜鉛、銅、マンガン、ニッケル、カドミウムを過剰に含む培地に播種し、耐性を検定した。その結果、NAS過剰発現シロイヌナズナは鉄、亜鉛、銅、マンガン、ニッケル、カドミウムのすべての過剰に耐性を示した。特にニッケル過剰培地に顕著な耐性を示した。NAS過剰発現タバコは鉄、亜鉛、銅、マンガン、カドミウムには顕著な耐性は示さなかったが、ニッケル過剰に対し顕著な耐性を示した。NAS過剰発現シロイヌナズナは非形質転換体の約5倍、NAS過剰発現タバコは約10倍のニコチアナミン濃度を有していた。NAS過剰発現タバコは北海道雨竜郡幌加内町弥運内から採取したニッケル過剰土壌を用いて栽培した際も正常に生育し、顕著な耐性をみせた。このことからニコチアナミンが鉄、亜鉛、銅、マンガン、ニッケル、カドミウム、特にニッケル過剰の過剰害から植物を防御する機能をもつことが明らかになるとともに、NAS遺伝子を過剰発現する植物が重金属汚染土壌からの金属の回収(ファイトレメディエーション)に有効であることが示唆された。この研究成果は2005年に北京で行われた植物栄養学の国際会議で発表し、日本植物生理学会雑誌(Plant Cell Physiology)に掲載された。また、この論文はネットからのPDFアクセス数の月間トップ10に入った(8位)。このことはニコチアナミン研究への関心の高さを示すとともに、この研究が常に世界の研究者と競合していることを示す。
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