研究概要 |
本研究では,蒸気消毒や各種薬剤消毒と,消毒後の土壌への有機質資材の施用が,微生物群集へ及ぼす影響を明らかにし,消毒後の適切な土壌管理法を提言すること目的とする.これまでの研究結果を踏まえ,本年度は,特に消毒直後に着目し,培養法することにより,無機態窒素量,微生物バイオマス量,微生物活性の変化の関係を検討した. 臭化メチル剤(MeBr区),クロルピクリン剤(CP区),蒸気(SS区)消毒を施した土壌を25℃で培養し,消毒後1,4,8,14,35日目に試料を採取した.無機態窒素量,微生物バイオマスの指標としてバイオマス窒素量,ATP含量,活性の指標として土壌呼吸量,デヒドロゲナーゼ活性,Biolog法による基質資化活性を測定した. 無機態窒素量は,消毒1日後は低く,消毒4〜8日後に増加した.その順はCP>SS>MeBr区であった.一方,微生物バイオマスは,消毒により減少した.現象の程度は,MeBr区に比べてCP,SS区で有意に低かった.その後の回復はみられなかった.また,無機態窒素の増加量は,微生物バイオマスの減少量に比べて多かった,これらから,無機態窒素の増加は微生物バイオマスの回復に先行しておこること,増加の程度は消毒処理により異なること,また,増加した無機態窒素の給源は死菌体とそれ以外の有機態窒素であることが分かった. 微生物活性は,分析法により異なる挙動を示した.土壌呼吸積算量は,消毒1日後から,特にSS区とCP区で顕著に増加した.一方,デヒドロゲナーゼ活性と基質資化活性は,消毒直後に減少し,MeBr区に比べ,CP,SS区で低かった.その後も低く推移した.これらの事実は,消毒後の土壌において,有機物分解にともなう無機態窒素の増加が,生残菌の活動ではなく,元々土壌に存在していた細胞外酵素や死菌体から放出された酵素の働きによるものであることを示唆している.
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