研究概要 |
好中球ミエロペルオキシダーゼ(MPO)は次亜塩素酸(HOCl)あるいは次亜臭素酸(HOBr)を産出する酵素である。好酸球ペルオキシダーゼ(EPO)もHOBrを産出する。本研究ではタンパク質の酸化生成物であるハロゲン化チロシン(ブロモチロシンBrY、ジブロモチロシンDiBrY)及びその他のチロシン修飾物(ジチロシンDiY、ニトロチロシンNY)を測定するため、液体クロマトグラフィー/四重極型タンデム質量分析器(LC/MS/MS : Applied Biosystems API-3000)を用いて微量検出定量法の開発及び応用を行った。 7種類のチロシン修飾物をLC/MS/MSにより一斉分析する条件を構築したところ、DiY・チロシン測定、そしてさらにブチル化して他の修飾チロシンを測定するという二段階分析法を構築した。ヒトの尿からクロロチロシン類は多くの試料で検出限界以下であった。LC/MS/MSによるこの測定系を利用して尿からの微量検出定量を行ったところ、8.8±0.6(DiY),1.4±0.4(NY),3.8±0.3(BrY),and 0.7±0.1(DiBrY)mol/mol of creatinine(n=23)という数値が得られた。種々のマーカー(80xodGやヘキサノイルリジン)との相関を見たところ、ニトロチロシン以外のマーカーは相関していた。糖尿病患者及び腎症患者の尿を用いて測定を行ったところ有意な差が認められた。食品摂取による変動を調べたところ、ココア飲用により、尿中ジチロシンが有意に減少した。このように尿中の修飾チロシン測定は生体の酸化ストレスを評価する一つのマーカーとなることが示唆された。 構築したハロゲン化チロシン微量検出法は食品成分によるペルオキシダーゼ活性の抑制評価系に応用できることから、LC/MS/MSを用いたEPO阻害アッセイ系を構築しており、詳細は検討中であるが、ポリフェノールなど抗酸化剤に強い抑制作用を見出している。
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