研究概要 |
より効率的なスギ材利用のためには,立木の力学的性能を予測する必要がある。風や台風によって樹幹が受ける曲げモーメントは樹形によって異なることに着目し,樹形によって木部の力学的性質が異なると考えた。この研究ではスギ林木の形状比(樹高/胸高直径)から力学的性能を予測できるか否かについて検討した。 オビスギ品種展示林(38年生),若齡の林分(24年生,品種不明),成長の異なる3林分(47〜50年生,品種不明)および植栽密度試験林分(32年生,トサアカ)を対象に形状比(樹高/胸高直径)と樹幹曲げヤング率との関係を調べたところ,以下の結果を得た。 (1)品種によって3つのタイプ,すなわち,(1)林分内の生育環境によって形状比が異なり,形状比が大きくなると力学的性質が増大するタイプ,(2)林分内の生育環境によって形状比が異なるものの,力学的性質への形状比の影響が小さいタイプ,(3)生育環境の影響が小さく形状比の変動が小さく,力学的性質の変動も小さいタイプに分類され,(1)のタイプが多かった。 (2)展示林全体を品種が混在する1つの林分とした場合,形状比と樹幹曲げヤング率との間には密接な関係がみられ,形状比が大きくなるほど樹幹曲げヤング率は増大し,形状比100付近で増加割合が低下した。 (3)形状比によって展示林のスギ林木を区分すると,樹幹曲げヤング率が大きくバラツキの小さいグループを選別することが可能であった。 (4)24〜50年生までの林分では,林齢に関係なく,形状比と樹幹曲げヤング率との間に密接な関係がみられた。 (5)成長の異なる林分間でも,形状比と樹幹曲げヤング率との間には密接な関係がみられ,形状比の小さな林分に比べて,大きい林分では樹幹曲げヤング率が大きかった。 (6)植栽密度を制御した林分では,植栽密度が大きくなるほど形状比が増大し,樹幹曲げヤング率も増大した。 これらの結果から,スギ林木の品質管理や育林施業において,形状比が有効な指標となることがわかった。
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