研究概要 |
【背景】近年ゲノム情報を活用した効率的な育種法の確立が養殖産業において強く求められている。トラフグはゲノムドラフト配列が解読されているため,連鎖地図を利用することで,効率的な育種が可能となるが、連鎖地図の報告はこれまでない.本研究ではトラフグのゲノム全領域をカヴァーする連鎖地図を得るため,昨年度作製した連鎖地図にマーカーを付け加え、トラフグの染色体数に対応した数の連鎖群を得ることを目的とした。また、魚類間のゲノム構造の保存度を調べるため、トラフグ連鎖地図に関連づけられた全ゲノムの10%の配列を用いて、メダカ、ミドリフグのゲノム構造と比較した。 【結果】雌雄の減数分裂における連鎖解析の結果,200個のマーカーからなる22個の連鎖群を得た.この数はトラフグ半数体の染色体数と一致した。また、マーカーの連鎖率は95%に達したので、ほとんどの表現型の責任遺伝子座がこの地図上にマップできると考えられた。以上から、実用レベルの連鎖地図が完成したと言える。連鎖地図に貼り付けられたゲノム配列長は合計40Mbであり、これは全グノムの10%であった。この配列上に存在する予想遺伝子を利用して、メダカおよびゼブラフィッシュの遺伝子配置(ゲノム構造)を比較したところ、これらの魚類間では、驚くほどゲノム構造が類似していることが明らかとなった。したがって,トラフグを中心とした魚類の比較ゲノム解析により,多くの養殖対象魚のゲノム構造が推定可能であり、トラフグゲノム情報を本種のみならず、他魚種の育種に活用する道が開かれた。
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