研究課題
若手研究(B)
浜名湖の本湖と猪鼻湖、および今川と西神田川においてニホンウナギを計809個(全長範囲:54.2-798mm、体重:0.2-1034.7g)を体採集した。まず、これらの性比を調べたところ、湖では雌雄比がほぼ1:1であるのに対し、河川では6:1と大きく異なることがわかった。採集地点間で全長を比較すると、雌では猪鼻湖の個体が本湖、今川より小型であったが、雄では有意差はみられなかった。一方、西神田川における黄ウナギ198個体の採集地点をみると、河口からの距離と黄ウナギの全長には有意な正の相関がみられた。このことは、上流に向かうほど大型個体が多いことを示している。さらに河川内における単位面積あたりの個体数密度指数は、上流に向かうほど減少する傾向がみられた。河川と湖の間で黄ウナギの年齢を雌雄別に比較したところ、河川の雌の年齢(5.2歳)は湖の雌のもの(平均4.5歳)よりも有意に高かく、雄においても同様の傾向が認められた(河川:5.5歳、湖:3.7歳)。年齢ごとに河川と湖の雌雄の成長速度を比較したところ、1〜2歳までの成長は湖の黄ウナギ(131.9mm/年)の方が河川のもの(104.4mm/年)よりも有意に高かった。本研究の結果、まず河川内のウナギは上流ほど大型個体が低密度で生息していることが明らかになった。また、河川には雌が多く、湖よりも2-4歳の成長の悪い高齢個体が生息していることがわかった。一般的に、高齢・低成長の個体群(河川)は、若齢・高成長の個体群(湖)よりも漁獲の影響を受けやすい。近年明らかになった河川へ遡上しない海ウナギの資源生態学的な側面は未だ明らかでないものの、現時点の資源保全には、少なくとも河川の個体群を重点的に保護する必要があると考えられた。
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