研究概要 |
本研究の目的は,消費者の食品安全性に対する意識が,国産農産物/輸入農産物の選択・購買行動に対してどのような影響を与えているかを定量的に分析することである.初年度のプレ調査の結果を踏まえて,2年目の調査では複数の生鮮食料品を対象にした選択実験をおこなった. 既存の食品安全性に関する選択実験では,単一の品目(牛肉,野菜,牛乳など)が対象とされることが多かった.しかし,単一品目の分析から国産/輸入の選択行動を分析するのでは,その品目特有の影響を排除することは困難である.そこで本研究では,複数の生鮮食品を対象とした選択実験をおこない,分析データをパネルデータとして扱うことにより,品目の枠を超えた国産/輸入の選択行動を分析することを目標として調査をおこなった.初年度の調査は郵送調査法によっておこなったが,2年目の本調査は質問量が非常に多くなり,郵送調査では回答不備が多数生じることが予想されたため,本調査にはインターネット・リサーチを用いることとした. 分析結果のうち,多変量解析による意識と行動の関連分析では,各原産国に対する正の(好ましい)感情が,その国の農産物の購買行動と相関を持つ傾向がみられた.ただし,この相関の大きさは国によって異なり,米国では比較的大きいが中国では相対的に小さい等のばらつきがある.選択実験の分析からは,原産国による選択傾向が異なる品目にも共通してみられることが確認された.意識分析と選択実験の統合モデルによる計測では良好な結果は得られていないが,これまでの研究で明らかになった知見をベースとして,さらに検討を進めたいと考えている.
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