研究概要 |
本研究は,二段階CES生産技術をもち,土地制約の下で利潤最大化行動をとる農家を想定し,稲作農業の技術変化を実証分析する方法の考案を目的とした。特に,この生産技術を構成する機械的技術(M技術)の進歩が,生物学的・化学的技術(BC技術)の進歩と関係をもちつつ,稲作農業の急速な成長において中核的役割を果たした状況を,理論的,数量的に説明する方法の考案を目的とした。また,実証分析における資本データの重要性から,農機具の品質変化を考慮した,より望ましい資本サービス価格・数量指数を作成することも目的とした。 当初は16年度に農機具データの収集・整理,17年度に理論,実証分析をおこなう計画であったが,分析を進めるにつれ,農機具の価格と特徴に関する適切なデータの収集,整理には予想以上に時間がかかることがわかった。このため,実際の研究は,トラクターの価格・特徴に関するデータの収集・整理と,技術変化の実証法の考案を別々におこなうにとどまった。 前者に関しては,『農機価格ガイド』(1969〜2005年)収録のトラクター価格,『農業機械カタログ集』(同期間)収録のトラクターの特徴を入手するとともに,農業機械化研究所での調査により,1970年代後半以降に販売されたトラクターの標準装備,オプションに関するより詳細な情報を入手した。その一部の整理から,将来的に品質を調整したトラクターの価格指数が作成できる可能性を確認した。 後者に関しては,(1)2段階CES生産技術を利用する分析を円滑に進めるには土地制約を関連するシャドウプライスで置き換えるのが有効であること,(2)M技術の変化は労働と資本に関する要素増大係数の変化率の集計量として表現できること,(3)労働,資本用役,経常財の競争的市場を仮定するとき,モデルの推定はM技術,集計技術,BC技術の順に3段階でパラメータを推定すればよいことがわかった。
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