研究課題
若手研究(B)
神経因性疼痛モデル動物では、脊髄背根神経節(Dorsal Root Ganglion ; DRG)内の神経成長因子(NGF)濃度が増加することや、NGF存在下で培養したラットDRGニューロンでは自発性活動電位が生じることから、NGFが神経因性疼痛の発症に関わっていると考えられている。しかし、DRGニューロンは均質な細胞集団ではなく、NGFにより興奮性が亢進したニューロンがどのような特徴を持つか、またNGFを添加することで細胞内Ca^<2+>濃度([Ca^<2+>]_i)はどのように変化するか不明である。NGF存在下で培養したDRGニューロンの特徴を[Ca^<2+>]_iを指標に検討した。NGF群のニューロンでは対照群と比較して、無刺激条件下の[Ca^<2+>]_i変動の振動に増大が認められた。この[Ca^<2+>]_i変動は細胞外Na^+濃度を減少させることや、TTX、Lidocaineの適用により減少した。このことから[Ca^<2+>]、変動の振動増大は電位依存性Na^+チャネルの活性化、すなわち活動電位の発生に起因していることが示唆された。DRGには侵害刺激を受容するCニューロンが存在している。このCニューロンには侵害刺激を受容するTRPV1が発現している。TRPV1はCapsaicinにより活性化されることが知られているので、Capsaicinを用いてNGFにより[Ca^<2+>]_i変動の振動の増大が引き起こされたニューロンの特性を調べた。その結果、NGFにより興奮性の亢進したDRGの中にはCapsaicinに応答して[Ca^<2+>]_i上昇を示す細胞が多数存在することが分かった。以上の成績からNGFはCニューロンに作用し自発性活動電位を引き起こし[Ca^<2+>]_iを上昇させていることが明らかになった。このNGFによる侵害受容Cニューロンの異常興奮性誘発が神経因性疼痛の発症機序の一因であると考えられる。
すべて 2005
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Biomedical Research 26・3
ページ: 123-130
130004470641
Peptides 26・12
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