研究概要 |
レプトスピラは人獣共通感染症であるレプトスピラ症の起因菌であるが,その病原性機構はほとんど明らかになっていない.レプトスピラ症の多彩な臨床症状は,レプトスピラが多様な臓器に接着・侵入することで引き起こされる.研究代表者はこれまでの研究から,他の病原性細菌の細胞接着因子と相同性のある病原性レプトスピラのLigタンパク質を同定し,このタンパク質がレプトスピラの接着因子として機能しているかについて解析を行ってきた.しかしながら,培養細胞へのレプトスピラの接着において,Ligタンパク質が接着因子として機能しているとの決定的な証明を行うことはできなかった.そこで,レプトスピラの細胞接着因子を網羅的に解析するために,ファージディスプレイ法により,培養細胞への接着に必須のレプトスピラ遺伝子の同定を試みた. 全ゲノム配列が明らかになっているレプトスピラFiocruz L1-130株よりゲノムを抽出・断片化を行い,1〜3kbの大きさの断片を回収し,T7ファージの10Bキャプシドタンパク質との融合タンパク質としてファージ上に提示するゲノムライブラリーを作製した.このライブラリーをFiocruz株の保菌動物であるラットの腎臓上皮由来培養細胞NRK-52Eへの結合を指標にスクリーニングを行い,結合するクローンを選抜し,インサートの塩基配列を決定した.独立した6回のスクリーニングを行い,結合ファージクローンのインサートの配列を決定したところ,同一の塩基配列をもつクローンが認められた.今後これらのクローンのレプトスピラ遺伝子について,組換えタンパク質の作製を行い,その組換えタンパク質がレプトスピラの培養細胞への接着を阻害できるかについて明らかにすることで,レプトスピラの接着因子の同定を行っていく.
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