研究概要 |
本研究は、糖供与体二リン酸-二価金属キレート構造に着目した新規糖転位酵素阻害剤の開発を目的とするものであり、本年度は以下の事柄を行った。 1.昨年度までに確立したTunicaminyluracilの合成法を基盤として、各種Tunicaminyluracil誘導体を合成した。子ウシ由来β1,4-GalT-Iを用いた阻害実験を行った結果、11'-phenylthio tunicaminyluracilにβ1,4-GalT-I阻害活性があることを見出した。 2.糖供与体二リン酸-二価金属キレート構造をガラクトピラノース、ベンゼンジメタノール、アルキル・アルケニルリンカーで模倣し、ガラクトースとウリジンを連結した化合物を設計した。各種誘導体はそれぞれワンポットグリコシル化反応、アルキル化・グリコシル化反応、クロスメタセシス反応を用いることで効率的かつ網羅的に合成することができた。合成した化合物群のβ1,4-GalT-I阻害活性を検討したが、活性は認められなかった。現在は活性を有する化合物を見出すべく、β1,4-GalT-IのX線結晶構造を基にしたin silicoバーチャルスクリーニングを取り入れて、新たな誘導体の設計・合成を継続している。 3.β1,4-GalT-I阻害活性が認められた11'-phenylthio tunicaminyluracilに関しても、β1,4-GalT-Iとのドッキングスタディーを行った結果、undecose内ピラノース環が二リン酸-二価金属キレート構造をうまく模倣しうることが示唆された。本結果をもとにして構造情報に基づいた薬物設計(SBDD)を行い、さらに強いβ1,4-GalT-I阻害活性を有するtunicaminyluracil誘導体の合成を行っている。
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