研究概要 |
平成18年度における本研究の計画は,(1)基質を固定した樹脂のアフィニティークロマトグラフィーへの応用(2)薬物代謝酵素の光反応性化合物を結合した基質認識性と酵素活性部位の特定であった.本計画に基づき研究を行い,以下のような結果を得た. はじめに,Tentagelに固定したスルフィドを固定相としたカラムクロマトグラフィーを作成し,そこに可溶化したラット肝ミクロソームを通導することによる,アフィニティーカラムへの応用を検討した.その結果,溶出順序が遅くなるほど高い活性を示したものの,未だに複数の酵素の混合物であった。その原因として,基質-酵素間の親和性が弱いことが考えられたので,液層の酵素反応で最も酵素との親和性の高かった基質であるβ位にヒドロキシル基を持つスルフィドについて同様の検討をし,SDS-PAGEによりほぼ単一のバンドを有する酵素を得た.得られたタンパクの構造解析および同定については現在検討中である. 一方,酵素精製に光反応を利用するために,スルフィド化合物に光反応性化合物であるトリフルオロメチルジアジリン基を結合し,このものをTentagelに固定たものの酵素反応について検討した.酵素反応後,固相より反応物を切断し,その成績体を確認したところ,望むべく成績体の生成を認めたものの,予想した以上に低収率であった.しかしながら,酵素が基質を認識している可能性が示されたため,反応溶液中に光を照射して酵素一基質複合体を捉えることを試み,固定相からの切断後したものをSDS-PAGEにて解析したが,複雑なタンパクの混合物を得たのみであった.今後は,発色団の再検討を行い,より変換効率の良い光反応性化合物を見出す予定である.
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