研究概要 |
本研究課題において昨年度までに,マウス腹腔マクロファージを用いたリポ多糖刺激によるNO産生抑制活性を一次スクリーニングとし,アーユル・ヴェーダやユナニー医学において炎症性疾患の治療に用いられている没薬から,myrrhanol Aをはじめ数種の含有テルペノイド成分にNO産生抑制活性が認められた.また,これら候補化合物のiNOSに及ぼす影響を検討したところ,myrrhanol Aは,iNOSに対する酵素阻害活性は殆ど認められず,iNOSの発現を抑制することが判明した.同様にエジプト地域に自生するヒガンバナ科植物のCrinum yemenseの球根部から3種の新規ヒガンバナアルカロイドyemenin A-Cを単離・構造決定するとともに,yemenin Aをはじめ数種の含有アルカロイド成分がiNOS発現抑制活性に起因するNO産生抑制活性を有することを見いだすなど,新しいタイプの天然由来化合物(低分子リガンド)にα-methylene-γ-butyrolactone構造を有するセスキテルペノイド類であるconstunolideやdehydrocostus lactoneなどと共通する作用メカニズムを見いだした.今年度はこれまでに得られた結果をふまえ,タイ料理のトムヤンクンなどに香辛料として用いられるAlpinia galangaから得られたフェニルプロパノイド成分の1'S-1'-acetoxychavicol acetateを低分子リガンドとして,NOの過剰産生に至るシグナル伝達機構に関与するタンパクあるいは遺伝子の発現に及ぼす影響を解明した.また,日本民間薬のヒュウガトウキからクマリン類やアセチレン化合物を,さらには漢薬良姜からジアリルヘプタノド類を新たなタイプの低分子リガンドとして見いだすなど,今年度の当初計画をほぼ達成した.
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