研究概要 |
腸管出血性大腸菌O-157の産生するベロ毒素は死亡率の高い溶血性尿毒症症候群を引き起こすために大きな社会問題となっている。しかし,その治療には抗生物質,止瀉薬が効果的に作用せず,未だに有効な治療薬の開発には至っていないのが現状である。そこで,O-157による被害を最小限に抑えるためにはベロ毒素を迅速に検出し,原因食品を速やかに特定する必要がある。しかし,従来法のバイオアッセイ法では正確に検出できるが,4日程度の時間を必要とする。また,PCR法や抗原抗体法では数時間から24時間で分析できるものの判定誤差が生じる。従って,より迅速かつ正確にベロ毒素を検出できる方法論の開発が待ち望まれている。 そんな中,蛍光標識した低分子化合物とタンパクとの結合は蛍光偏光度測定により瞬時に高感度検出できることが最近明らかになった。また,ベロ毒素が認識結合するヒトの細胞表面の受容体はスフィンゴ糖脂質Gb3の糖鎖部分である。従って,蛍光標識化したGb3糖鎖を用いて蛍光偏光度測定することによって,ベロ毒素を迅速かつ高感度に検出できると考えられる。 蛍光標識基としてダンシル基およびフルオレセイン基をGb3,およびGb2糖鎖に導入したベロ毒素検出化合物の合成に成功した。これらのサンプルの内,フルオレセイン基を導入したGb3糖鎖がガラクトース糖鎖認識レクチンBS-1と結合することを,蛍光偏光度測定によって高感度に検出できることが明らかとなった。現在,より毒性の強い2型のベロ毒素の検出評価試験を検討中である。
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