研究概要 |
臭素化難燃剤成分を「フェノール性水酸基を含有する化合物群」と「含有しない化合物群」の二つにわけ,それぞれ異なるアプローチによる簡易計測法の開発し,実試料分析を行った。前者を対象とした研究では,昨年度構築したテトラブロモビスフェノールA(TBBPA)の高感度・高選択的分析法を改良することで,TBBPA投与ラットの体内動態解析を実施した。後者を対象とした研究では,分析モデル化合物であるハロゲン化ベンゼン類に対するSuzuki反応の導入並びにそのエキシマー蛍光発現について検討を行った。両項目の精査検討により,以下の成果を得た。 (1)TBBPA投与ラットの体内動態解析 ラット組織中のTBBPAを定量するための前処理法及びLC-MS/MS定量法を開発した。同法を用いてTBBPA投与ラットの各臓器,血清及び糞を分析したところ,投与したTBBPAのほとんどは72時間以内に糞中に排泄されていたが,肝臓,腎臓,肺,血清及び脂肪組織の順でTBBPAが残留していることが確認された。肝臓からの抽出成分をMS/MS法で高分解能解析すると,TBBPAだけでなく,そのモノグルクロン酸抱合体及びモノ硫酸抱合体が検出された。TBBPAモノ硫酸抱合体はこれまでに報告されていない新規の代謝産物であった。 (2)ポリハロゲン化ベンゼン類のエキシマー蛍光誘導体化分析 ピレンホウ酸試薬を用いるポリハロゲン化ベンゼン類のエキシマー蛍光誘導体化分析を試みた。Suzuki反応を介することで,検討した全てのジハロゲン化ベンゼン類はピレン標識され,一部の化合物からはエキシマー蛍光が発現した。誘導体化反応の収率及びエキシマー蛍光の発現効率は,オルト及びパラ位のジ置換体よりも,メタ位のジ置換体の方が優れていることが確認された。
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