研究概要 |
薬物代謝酵素であるチトクロームP450 2A6 (CYP2A6)の個人差の原因を明らかにするため,まず,CYP2A6遺伝子型を判定したヒト肝臓試料140検体のCYP2A6 mRNA量をリアルタイムRT-PCR法により測定した.CYP2A6 mRNA発現量の個人差は700倍以上であり,野生型であるCYP2A6^*1をホモ接合体で有する群内においても約100倍であった.次に,CYP2A6遺伝子の転写調節領域の同定および5'-上流領域における遺伝子多型の探索を行なった.野生型であるヒトゲノムDNAからPCRによりCYP2A6遺伝子5'-上流領域-7.0kbの領域を増幅し,ルシフェラーゼレポーターコンストラクトを作成した.欠失変異体を作成したところ,約-1.0kbまでの間に転写活性化領域を,約-3.0kbから4.5kbの間に転写抑制領域を見出した.遺伝子多型は現在5'-上流領域-4.5kbまでに既知の遺伝子多型3種類を含む27種類見出した.このうち-1.0kbまでの領域には4種類の遺伝子多型が,約-3.0kbから-4.5kbの領域には5種類存在した.メチル化されエピジェネティクな影響を及ぼすCpG部位を探索したところ,5'-上流-1.0kbまでの領域には6個のCpGが,約-3.0kbから-4.5kbの領域には19個のCpG存在していた.また,遺伝子多型により新たにCpGとなる部位およびCpGが潰れてしまう部位が存在した.この領域はルシフェラーゼなどのレポーターアッセイではその影響を直接検討できないため,そのメチル化状態とCYP2A6 mRNA発現量との相関を取る必要があると考えている.
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