研究課題
若手研究(B)
本研究ではループス腎炎(IV型)に移行した難治性のSLE患者についてCYP2B6、CYP2C9、CYP2C19、およびCYP3A4の遺伝子型を判定し、薬効発現の個人差が生じた原因を明らかにするとともに、遺伝子型に基づく患者ごとに個別化した最善の治療法を構築することを目的とした。平成16年度実施計画ではシクロホスファミド・パルス療法を受けたSLE患者で、(1)20歳以上でシクロホスファミド・パルス療法を受けた患者。(2)本研究の参加にあたり十分な説明を受けた後、十分な理解の上、患者本人の自由意志による文書同意が得られた患者。(3)本研究開始前に研究担当医師が説明文書に基づき説明し、被験者の自由意志による同意を文書で取得したシクロホスファミド・パルス療法を受けたSLE患者に対し、説明後に同意取得および採血を行った。その他薬物代謝酵素の遺伝子多型頻度解析のコントロール群としての健常成人については、説明後に同意取得および採血を行った。さらに、以下の3点を実施した。(1)対象患者および健常日本人の末梢血からゲノムDNAを調製した。(2)シクロホスファミドの代謝的活性化に関与するCYP2B6、CYP2C9、CYP2C19、CYP3A4遺伝子について、末梢血から抽出したゲノムDNAを鋳型とし、PCR-RFLPおよびダイレクトシークエンス法により、遺伝子変異の有無を検出した。(3)シクロホスファミド代謝に影響を与えうる併用薬ニカルジピンの代謝阻害能を検討した。現在まで、CYP2B6、2C9、2C19遺伝子変異の有無を検討した結果、CPAパルス療法の治療効果の有無によりアレル頻度の差が認められないことを明らかにした。また、CPAパルス療法が有効であった9名についてCYP3A4遺伝子変異の有無を検討した結果、遺伝子変異を有していなかった。一方、CPAパルス療法が著効せず透析に至った患者6名のうち1名(8.3%)がCYP3A4*16を有していた。シクロホスファミド代謝に影響を与えうる併用薬ニカルジピンは従来CYP3A4の阻害効果が知られていたが、CYP3A4以外のCYPに対する阻害能も高く、特にシクロホスファミド代謝に関与するCYP2Cについて強い阻害が認められた。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (1件)
Biol Pharm Bull 28(5)
ページ: 882-885