研究概要 |
NSAIDsのフルルビプロフェンとインドメタシンの皮膚透過性を検討したところ、両薬物の皮膚透過はpH依存性で基質濃度に対して飽和性を示した。皮膚におけるトランスポーターmRNAの発現を検討したところ、MRP,OATP,MCT,OCTNなどのトランスポーターの発現が認められた。ニューキノロン抗菌薬グレパフロキサシンおよび蛍光性有機アニオン化合物Fluo-3/AMについて、MRP1遺伝子欠損マウスおよび正常マウスにおける組織対血中濃度比と皮膚透過性を検討した。その結果、グレパフロキサシンの皮膚への分布はMRP1欠損マウスにおいてより高いことがわかった。また、Fluo-3の皮膚透過はプロベネシドやFCCP存在下で促進されること、Fluo-3の皮膚への蓄積がMRP1欠損マウスにおいてより高いことが明らかとなった。これらの結果から、NSAIDs、ニューキノロン抗菌薬、蛍光性有機アニオン化合物等の皮膚透過に、MRP,OATP,MCT,OCTNなどのトランスポーターが関与する可能性が示された。 新規キサンチンオキシダーゼ阻害薬Y-700の肝取り込み機構の解析を行った。ラット遊離肝細胞を用いた取り込み実験を行ったところ、Na^+依存性でKm値が約100μMの飽和性の能動輸送機構の存在が明らかとなった。種々トランスポーター発現細胞および阻害剤を用いた検討から、新規なトランスポーターの関与が示唆された。 これまで、ペプチド類似化合物の消化管吸収にH^+濃度勾配を駆動力とするオリゴペプチドトランスポーターPEPT1が関与することが知られている。小腸刷子縁膜には種々Na^+/H^+交換体が発現することから、PEPT1との機能的カップリングについて検討を行った。HEK293細胞にPEPT1及びNHE3を共発現させたところ、PEPT1によるペプチド輸送活性が増加し、Na^+依存的が見られたことから、PEPT1とNHE3との間に機能的カップリングが示唆された。この知見は、薬物動態におけるトランスポーターの役割を評価するためには、輸送に直接関わるトランスポーター分子のみならず、それと共存する他のトランスポーター分子の働きにも着目することが必要であることを示唆するものである。
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