研究概要 |
研究代表者は昨年度までに,麻酔ラットの後肢および腹部の皮膚侵害性刺激がいずれも卵巣交感神経を介して反射性に卵巣血流を調節することを見出した.後肢刺激は主に上脊髄性反射経路を介する.一方,腹部刺激は脊髄切断ラットにおいて脊髄性反射経路を介した血流調節を誘発することを明らかにした.しかし,中枢無傷ラットにおいて腹部刺激で起こる反射が脊髄性と上脊髄性のどちらの経路を介するものかは明らかでなかった. 体性-卵巣交感神経反射の経路の詳細を調べるために,本年度は脊髄求心性神経(T9-11)または肢(脛骨)求心性神経の単発電気刺激により誘発される体性-卵巣交感神経反射電位の,A-およびC反射の脊髄性および上脊髄成分をウレタン麻酔下のラットで調べた.中枢神経(CNS)無傷ラットにおいて,T9-11の脊髄求心性神経への単発刺激は潜時が約51msと117msの,速いおよび遅いA-反射電位および,潜時約200msのC-反射を卵巣交感神経遠心性神経に誘発した.第3胸髄レベルで脊髄切断後,同じ脊髄求心性神経の刺激は中枢無傷ラットでの速いA-反射と同じ潜時のA-反射と,潜時約112msのC反射電位を誘発した.一方,脛骨求心性神経への単発電気刺激は潜時約91msのA反射および潜時約228msのC反射を誘発した.多くの場合,A反射は異なる潜時の2つの成分に分離した.これらの脛骨求心性神経刺激で誘発されたAおよびC反射電位は,脊髄切断後には見られなかった. 以上の結果から中枢無傷ラットにおいて分節性の脊髄求心性神経の刺激によって卵巣交感神経に誘発されるAおよびC反射電位は脊髄および上脊髄に由来しており,脛骨神経刺激で誘発されるそれらの反射電位は上脊髄に由来すると結論づけられる.
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