研究概要 |
Gタンパク共役7回膜貫通型受容体のproteinase-activated receptor (PAR)は,PAR-1からPAR-4の4つがクローニングされているが,このうちPAR-1とPAR-2は哺乳類の消化器系臓器に広く分布しており,種々の生理的・病態生理的反応に寄与している.本研究では,マウス消化管縦走筋のPAR-1およびPAR-2活性化による収縮・弛緩反応のメカニズムを,胃および小腸(十二指腸,空腸,回腸)の縦走筋で検討した.また,PAR-2の機能を確認するためPAR-2-knockoutマウス(PAR-2-KO)の標本を用いて同様に検討した.胃および小腸の縦走筋標本にPAR-1活性化ペプチドTFLLR-amide (TF)およびPAR-2活性化ペプチドSLIGRL-amide (SL)を作用させると弛緩,収縮の両反応が見られた.これらペプチドによる弛緩反応は,小コンダクタンスCa^<2+>活性化K+チャネル阻害薬のapaminにより,胃標本では完全に,小腸標本では部分的に抑制された.一方,これらペプチドによる胃および回腸標本の収縮反応は,indomethacinあるいはcapsaicinにより部分的に抑制された.PAR-2-KOの標本ではSLによる反応が完全に消失していた.以上より,PAR-1あるいはPAR-2活性化による消化管平滑筋緊張の抑制性調節にはapamin感受性および非感受性のメカニズムが関与しているが胃では前者が大部分を占めていること,また興奮性調節には一部,収縮性prostanoidsおよびcapsaicin感受性知覚神経からの収縮性伝達物質が関与していることが示唆された.さらに,PAR-2-KOの標本を用いた実験から,PAR-2活性化ペプチドによる反応がPAR-2活性化を介していることが明らかとなった.
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