研究概要 |
本研究は、スキャッフォールド蛋白質(アダプター蛋白質)の新しい機能、すなわち免疫系においてリガンドとして細胞質型チロシンキナーゼを活性化することや、部位特異的な転写因子制御機構に着目したものである。昨年の報告書にも記載したように、1.スキャッフォールド蛋白質3BP2の機能解析(Qu et al., Biochemistry 2005)、2.スキャッフォールド蛋白質としての機能を有するユビキチンリガーゼCbl-bの機能解析(Qu et al., Blood 2004、Enoki et al., J.Pharmacol.Sci.2004)、3.スキャッフォールド蛋白質とヒトの遺伝病との関運(Miah et al., Genes Cells 2004)について報告し、平成16年度の研究計画であるスキャッフォールド蛋白質のノックダウンによる機能解析と同17年度の計画であるヒト遺伝病との関連についての当初の目的はほぼ達成された。 本年度は昨年度の成果を更に発展させて、Cbl-bの異常とI型糖尿病との関連について報告した(Qu et al., J.Biochem.2005)。I型糖尿病モデルラットで見出されたCbl-bの遺伝子異常は、カルボキシ末端のスキャッフォールド蛋白質としての機能ドメインを全て欠失する。この変異型Cbl-bをマスト細胞株RBL-2H3に発現させて解析したところ、IgEを介するマスト細胞活性化の部分的抑制が見出された。すなわち、Cbl-bによる脱顆粒と転写因子NF-ATの活性化は抑制されなかったが、サイトカインIL-3、IL-4産生は抑制された。ヒトI型糖尿病の家族症例で見出されたCbl-bの遺伝子異常と機能障害との関連については共同研究を継続しており、今後の課題としたい。3BP2と核内シグナルについては、転写因子との相互作用を見出すには至らなかった。昨年に引き続き、本研究成果をまとめた総説を発表した。
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