研究概要 |
膿胸関連リンパ腫は、30年以上慢性に経過した膿胸をもつ患者の胸腔内に発生する悪性リンパ腫で、形態学的にはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫分類されるが、臨床的には通常の大細胞型B細胞リンパ腫とは異なる性質を示す。膿胸関連リンパ腫では腫瘍は胸腔内にとどまることが多く、死亡時おいても遠隔転移は比較的少ないことが知られている。 これまでに、膿胸関連リンパ腫を遠隔転移を起こしにくいリンパ腫モデルとして用い、その遺伝子発現解析を行ってきた。その結果、膿胸関連リンパ腫ではIFI27遺伝子が非常に多く発現していることを発見した(Nishiu et al.,Cancer Science 95:828-834,2004)。IFI27遺伝子を発現していない乳癌細胞株にこの遺伝子を発現させると、細胞増殖速度は遅くなり、また軟寒天上でのコロニー形成も抑制した。 今回IFI27遺伝子を導入しIFI27遺伝子を発現している細胞株およびIFI27遺伝子を発現していない親株のRNAを抽出しcDNAマイクロアレイ解析によりIFI27の下流遺伝子の同定を試みた。IFI27遺伝子発現株において有意に発現量の多い遺伝子および少ない遺伝子をそれぞれ十数種類同定した。これらの中には細胞周期に関係するものや、サイトカイン等が含まれていた。現在それらについて定量RT-PCR法等を用いて検討中である。 また現在ポリクローナル抗体を作成し、IFI27遺伝子機能細胞増殖抑制に至るメカニズムおよびIFI27遺伝子の各臓器および各疾患での発現を検討中である。
|