研究概要 |
本研究は、神経膠腫の再発、悪性転化という脳腫瘍において最も重要な因子でありながら充分な検討が行われていない点に関して、glioblastoma(GBM)を臨床経過と遺伝子異常の検索からprimary glioblastoma(PGBM)とsecondary glioblastoma(SGBM)に分けて、癌関連遺伝子のジェネティック、エピジェネティックな変異という観点から腫瘍の解析を行った。更に、神経膠腫における各gradeに認められる遺伝子変異についても検索した。これらの結果を踏まえて、low gradeとhigh gradeの領域が混在するGBMに関して組織ごとに遺伝子変異の検出を行い、この組織多様性を示すGBM発生の機序についても検討を行った。 【研究の成果・進捗状況】遺伝子解析を終了した腫瘍材料はGBM100例(PGBM72例およびSGBM28例)、low-grade diffuse astrocytoma36例、anaplastic astrocytoma40例と、別に組織多様性を示すGBM20例である。SGBMではRB1,PTEN,p21,p27,O^6-MGMT,Hrkのメチル化はPGBMよりも優位に高頻度でみられた。p53 mutationはlow gradeの腫瘍からみられる変異であるが、これらの遺伝子のメチル化はlow gradeの腫瘍では認められず、ヒストンH3、H4に関してはgradeが高くなるにつれて低アセチル化の状態となり、これらの遺伝子群のエピジェネティックな変異が悪性転化に関わる因子である可能性が示唆された。一方、これらの変異は各gradeが混在する組織多様性を示すGBMについては、gradeごとの遺伝子変異の違いはみられなかった。組織多様性を示すGBMは遺伝子変異の観点からはPGBMに近似すると考えられた。
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