研究概要 |
【目的】Astrocytoma(AS)の予後は概ね不良であるが、1pの欠失(-1p)を有するoligodendroglioma(OL)は化学療法が著効を示し予後良好である。しかし、組織学的所見のみで両者を鑑別することは困難である。本研究ではoligodendrogliaの分化に関与する転写因子OLIG2とその阻害因子ID2に着目し、OLIG2,ID2発現とglioma細胞形態の関連を検討した。 【方法】AS由来の細胞株U251MGにID2発現を抑制するTGF-βを添加して培養し、OLIG2、GFAP発現の変化を検討した。Glioma切除検体38例におけるOLIG2,ID2発現を免疫組織学的に解析した。Paraffin切片からDNAを抽出し、CGH法により染色体異常を調べた。 【結果】TGF-βを添加してU251MGを培養するとID2発現の抑制に伴ってOLIG2発現が誘導され、GFAP発現が抑制された。ASではID2がOLIG2よりも高発現し、OLではOLIG2がID2よりも高発現していた。-1pはOLの64%(7/11),ASの4%(1/27)に認められた。-1pを伴うgliomaでは、OLIG2がID2よりも高発現していた。 【考察】OLIG2,ID2発現がgliomaの細胞形態に密接に関連していると考えられた。特に同一細胞株でもOLIG2,ID2発現の変化はGFAP発現と関連していることから、両者の相対的発現量がglioma細胞形態を規定する因子であることが示唆された。また、実際の病理診断ではOLIG2とID2の相対的発現量がASとOLを鑑別するための有用な指標となると考えられた。OLIG2,ID2染色は-1pを有する化学療法感受性グリオーマのスクリーニングに役立つことが示唆された。
|