研究概要 |
NASHは代謝・栄養障害が原因と考えられる肝障害で高度の脂肪沈着と繊細な線維化を特徴とする。本研究で明らかにされた点は次の通りである。 1,NASH発症・進展に関連するミトコンドリア酸化障害 NASHの発症・進展には酸化ストレスの関与が重要視され、核DNAの80HdG化が指標となる。NASH肝では80HdGが核に加えて細胞質にも存在する。細胞質80HdGはミトコンドリア(Mt.)DNAの酸化障害を反映しており、Mt.機能異常による細胞障害メカニズムが示唆された。(論文revise中) 2,糖化反応最終産物(AGE)受容体(RAGE)バリアントの肝内における局在 糖尿病の増悪因子として知られるAGEの受容体(RAGE)には膜型のほかに、分泌型バリアントが存在するが、それらの肝内分布や役割は不明である。ヒト正常組織を用いてRAGE各バリアントの分布を検討し、肝では毛細胆管に沿ってRAGEが分泌されていることを新規に見出した。RAGEの膜型、分泌型バリアントのバランス異常がNASHを含む各種疾患に関与する可能性が考えられた。(Mod Pathol. 2005 Oct;18(10):1385-96) 3,高コレステロール食ウサギに出現するNASH類似病変 高コレステロール食を8-12週摂取したウサギ肝は病理組織学的にヒトNASHに類似した組織像を呈し、脂質過酸化反応も著明に亢進していた。本モデルはnon-obese, non-insulin resistance statusであり、複雑なNASHの病態を解明する一助になると考えられた。(論文投稿中) 4,AGE受容体(Galectin-3)欠損マウスに出現するNASH類似病変 AGE受容体の一つであるGalectin-3を欠損したマウスが雄に有意に脂肪性肝炎を自然発症する事を見出し、その発症にAGE-RAGE系の異常が関与していることを明らかにした。(論文投稿中)
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