研究課題
若手研究(B)
ウイルス侵襲を受けた脳では、主としてグリア細胞がケモカインを分泌し、末梢白血球の動員を促進することで病原体の排除に働く。ミクログリアは脳に常在するマクロファージ様細胞であり、ケモカイン応答において中心的な役割を担う。本研究は、「ウイルス感染に対するミクログリアのケモカイン応答機序を明らかにする」ことを目的とする。昨年度までの研究では、神経系ウイルスに対するミクログリアのケモカイン発現様式を細胞レベルおよび生体レベルで明らかにした。本年度では、「ミクログリアのケモカイン応答を分子レベルで解明する」ことを目標とし、ウイルス感染における普遍的な分子構造(二本鎖RNA)を認識するレセプター(Toll様受容体3)を介したケモカイン発現誘導機序を解析した。ミクログリア細胞株をToll様受容体3リガンド(合成二本鎖RNA)にて刺激し、細胞内シグナル経路の活性化ならびにケモカイン遺伝子の発現様式を調べた。二本鎖RNA刺激したミクログリアでは、Nuclear factor kappaB (NF-κB)およびp38、c-Jun N-terminal kinase (JNK)を介した細胞内シグナル伝達経路が活性化することを示した。また、刺激によってCCケモカイン(CCL3、CCL5)およびCXCケモカイン(CXCL2、CXCL10)の遺伝子発現が増大することを示した。さらに、ケモカインの発現には、Mitogen-activated protein kinase (MAPK)ファミリーに属するp38およびJNKを介したシグナル経路が関与することが分かった。加えて、CCL3とCXCL2の発現にはNF-κB経路が関与することを示した。以上の結果から、ウイルス感染の場合と同様に、二本鎖RNAに対するミクログリアのケモカイン応答はNF-kBおよびMAPKを介したシグナル経路によって制御されることを明らかにした。
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