研究課題
若手研究(B)
近年、医療現場におけるX線診療技術は高速化・高精細化が目覚しい。特にX線CT装置においては、多列式検出器を備えたものが広く普及されるようになり、この傾向が強まっている。一方、その反面、医療被曝線量の点からすると、大幅な増大傾向にあって、問題視されている。放射線従事者の被ばく線量は極めて厳重に管理されている一方、医療被曝線量の上限はその目的の範囲内であれば無限大である。画像検査に頼りがちな日本の医療において、X線検査法の進歩発展は検査制度の向上以上に被曝線量の増加を生じさせているといっても過言ではない。X線被曝線量の推定にはX線スペクトルの測定が最も良い方法であるが、X線CT装置はX線を放出するX線管球が常に回転しているため、稼働中のスペクトル測定はきわめて困難と考えられていた。一時的に装置を保守点検モードなどに切り替え、また、特殊な方法をもってスペクトルの測定を行う方法はあったが、今回の研究では、そのような回転する線源からでもスペクトルを測定できる方法を開発している。我々は、従来の、X線のビームの中に直接検出器を設置する方法に代え、いったんX線ビームを被写体に入射させた後、そこから散乱してくるX線を捕らえることによってスペクトルを得る方法(これをコンプトンスペクトロスコピーという)の実用化を行った。X線CT装置について、X線管球が回転した状態での測定を行い、上記の方法で一次X線スペクトルを取得することが出来た。
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