研究課題/領域番号 |
16790309
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
応用薬理学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
寺田 智祐 京都大学, 医学研究科, 助手 (10324641)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2005
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研究課題ステータス |
完了 (2005年度)
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配分額 *注記 |
3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
2005年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2004年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
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キーワード | ペプチドトランスポータ / 転写制御 / 発現プロファイル / プロモーター / 小腸 / 吸収 / 腸上皮化生 / Cdx2 / 一塩基多型 / PEPT1 / PEPT2 / 経上皮輸送 / 薬物輸送 / シミュレーション / 速度論解析 |
研究概要 |
ペプチドトランスポータ(PEPT1)は、主に小腸上皮細胞の刷子縁膜に発現し、ジ・トリペプチド、さらにペプチド類似薬物等の吸収を媒介している。PEPT1の発現は様々な因子によって変動することが知られているが、その転写調節に関わる分子機構は不明の点が多い。そこで、PEPT1の転写制御に関する基礎的な知見を得ることを目的として、ヒトPEPT1のプロモーター領域をクローニングし、Caco-2細胞を用いて各種検討を行うとともに、ヒト消化管組織サンプルを用いて、PEPT1 mRNAの発現解析を行った。 PEPT1プロモーター領域のdeletion analysisの結果、転写開始部位の上流35から172bp間の領域がPEPT1の転写活性に重要であることが明らかとなった。この領域には基礎転写因子の一つであるSp1が結合すると推定されるGC boxが複数存在した。これら推定Sp1結合サイトにそれぞれ変異を導入することにより転写活性は低下し、また、Caco-2細胞の核抽出液を用いたゲルシフトアッセイにより、推定Sp1結合サイトとSp1の結合が確認された。さらに、PEPT1の転写活性は、Sp1の過剰発現により上昇し、Sp1とDNAとの結合阻害剤であるmithramycin A処理により低下した。これらの結果から、ヒトPEPT1プロモーターのbasal activityにはSp1が複数の結合部位を通して寄与していることが示された。 Sp1の発現分布はユビキタスであり、PEPT1の小腸特異的な発現を説明することはできない。そこで、PEPT1の組織特異性を規定する因子の候補として、腸管特異的な転写因子であり、小腸上皮細胞の分化や機能維持に重要な役割を果しているCdx2に着目した。Caco-2細胞でCdx2を過剰発現させた場合、PEPT1のプロモーター活性は顕著に上昇した。さらにCdx2の作用機序について、共発現系、クロマチン免疫沈降法等の検討を加えた結果、Cdx2はSp1と相互作用することによりPEPT1プロモーター領域に作用し、転写を活性化させることが示された。また、ヒトの胃組織(腸上皮化生の検体を含む)におけるPEPT1とCdx2のmRNA発現量は良好な相関を示した。これはPEPT1発現調節におけるCdx2の重要性をin vivoの面からも支持する結果であると考えられる。 ヒト消化管サンプルを用いて、PEPT1の発現プロファイルについて調べた。PEPT1は小腸において最も高く発現し、部位別の発現量は十二指腸>空腸>回腸であった。一方、食道、結腸、直腸にはほとんど発現していなかったが、胃では有意な発現が認められた。そこでPEPT1の発現の認められた胃の病理切片を用いてHE染色並びに、上皮細胞の刷子縁膜のマーカーの一つであるCD10の免疫染色を行った。その結果、いずれの組織も腸上皮化生の発生していることが分かり、胃に発現するPEPT1は腸上皮化生に由来することが示された。
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