1990年より開始した我々のOsaka Registry(小児期発症1型糖尿病患者データベース)をもとに、糖尿病合併症調査を実施し、その解析および疫学的検討を行った。調査方法等の詳細は前年度の報告の通りである。 本年度の解析対象者は、男性123名、女性238名の合計361名であった。その調査時年齢は、26.5±11.3歳、糖尿病罹病期間は15.7±8.5年、また糖尿病発症年齢は10.9±8.9歳であった。結果内容の背景として、対象者の調査時血糖コントロールは、ヘモグロビンA1c値として、対象者平均値7.9±1.8%であり、このうちコントロール良好群(ヘモグロビンA1c7%未満)は全体の26.3%を占めた。ヘモグロビンA1cが10%を超えるものは、全体の10.8%であった。 糖尿病関連の各合併症発症状況では、全体の24.9%(90名)に糖尿病性網膜症が存在し、治療の対象となっていた。網膜症を有する群は男性25名、女性60名からなり、平均罹病期間は24.0±6.3年であった。一方の網膜症を有しない群の平均罹病期間は12.9±7.3年であった。糖尿病性腎症は、全体の11.1%(40名:男性12名、女性28名)の患者が合併していた。この群の平均罹病期間は24.3±7.6年であった。その他の合併症有病率および生活状況の内容も解析中である。 昨年度既登録患者の現状調査および新規発症患者に対する病院調査の実施を検討したが、個人情報保護の観点から病院主治医からの患者情報提供は困難であり、予備調査においてもこれまでと同様の調査方法の継続は難しいと思われ、来年度以降の調査方法は今後検討の必要がある。 また、今回の解析対象者のうち175名(男性58名、女性117名)には2001年度にも同様の合併症調査を実施し、その回答が得られているため、縦断的調査対象としてのデータベースを新しく構築することとした。現在今年度の調査報告の還元と来年度の継続調査依頼の準備を行っている。
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