研究概要 |
本研究は、高齢者の社会活動による健康面への効果を明らかにすることを主目的とし、併せて、高齢者の社会活動レベルの変化と関連する要因について検討することを目的とする。1998年度、26市町村の高齢者約3,600人の社会活動レベル(活発度)を確認した。本研究では、このうち追跡可能な12市町村の高齢者約600人を対象に追跡調査を実施した。 1)初回調査時の活発度と7年間の生命予後との関連 追跡後2年以内の死亡者を除外し、初回時の4側面別活発度すべてを把握できた535人(男272、女263)を解析対象者とした。初回時の活発度が不活発、やや不活発、ふつうを「非活発」群、やや活発、活発を「活発」群とし、男女別に、各側面別の「非活発」に対する「活発」の死亡リスクをCox比例ハザードモデルによって求めた。追跡期間中に56人の死亡があった。年齢と各側面別活発度を調整後、男では、個人活動(HR=1.08,95%CI:0.53-2.21)、社会参加・奉仕活動(0.55,0.26-1.18)、学習活動(0.98,0.49-1.96)、仕事(0.96,0.41-2.24)、女では、個(0.87,0.29-2.61)、社・奉(0.81,0.27-2.41)、学(1.74,0.55-5.48)、仕(0.69,0.15-3.07)であり、活発な社会活動「社会参加・奉仕活動」が男の死亡リスク減少に寄与している可能性が示唆された。 2)初回調査時の対象者特性と7年後の活発度の変化との関連 7市町村167人の7年後の活発度を確認した。「非活発」から「活発」に向上した者は個39.6%、社・奉40.9%、学38.5%、仕12.6%、「活発」から「非活発」に低下した者は個23.5%、社・奉16.7%、学30.8%、仕57.1%であった。個:「女」「独居」、社:「飲酒あり」、学:「子との同居なし」、仕:「前期高齢者」で活発度向上者が、社:「女」「幸福感低い」「けが・病気あり」、学:「喫煙歴なし」「ADL低い」「幸福感低い」で活発度低下者が有意に高かった(または高い傾向がみられた)。活発な社会活動の維持・向上に対象者の属性、生活状況、心理的状態、健康状態が関連することが明らかになった。
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