研究概要 |
[目的]アラル海縮小に伴う環境変化が小児の健康に及ぼす影響について1995年以来検討を続けてきた.今回,2004年(夏)と2005年(冬)にカザフスタン共和国において周辺住民の健康状態と飲料水との関連に焦点を当てた疫学調査を実施した。 [対象と方法]同国カザリンスク地域において,水道水供給地域(A地域)と井戸水利用地域(B地域)において,児童(9-15歳)を対象とした調査を2004年夏(255名),2005年冬(216名)に行った.対象者より飲料水の提供を受け,現地で水質検査キット(柴田科学社製)を用いて,一般細菌群(一),大腸菌群(大)のコロニー数を計測した.消化器系症状(最近4週間の有無)については,質問紙を用いて聞き取りを行った. [結果と考察]A・B地域共に,(一)および(大)のコロニー数は,冬より夏の方が有意に高かった,しかし,どちらのコロニー数とも,夏・冬共に地域間の差は認められなかった。消化器系症状の有無とコロニー数との関連については,夏は,A地域では腹痛と(大),調査したすべての症状と(一)の間に関連が認められ,B地域ではどの項目も認められなかった.冬は,A地域では,腹痛および嘔吐と(大),嘔吐と(一),B地域については,腹痛および吐き気と(大),吐き気と(一)との間に関連がみられた.カザリンスク地域において,水利用対策の見直しおよび飲料水利用に関する健康教育の必要性が示唆された.
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