| 研究概要 |
現在までに,飲酒後の不快症状発現において重要な役割をもつアルデヒド脱水素酵素2について,その転写制御領域に見出された遺伝子多型の機能的意義につき解析を行ってきた.生理的条件下での遺伝子発現変化の評価系として,循環末梢血中リンパ球に着目し,飲酒負荷によりALDH2欠損に起因するアセトアルデヒドの蓄積が,ALDH2mRNAを増加させることを見出した.さらにこの遺伝子発現誘導は,ALDH2遺伝子のpromoter領域の-361G→A変異により抑制されることを示した(第40回日本アルコール・薬物学会シンポジウム発表). さらに,ヒト飲酒負荷試験により心拍変動解析を用いた,自律神経応答評価,血中カテコールアミン分泌変化に及ぼすアルコール摂取の影響についてデータを蓄積し,循環器系調節に深い関わりが予想される神経系の遺伝子等について多型解析を進め,その関連性を検討してきた.即ち,上記ALDH2に加え,カテコールアミン系の代謝関連酵素(PNMT,COMT,MAOA,NPY)及び,アドレナリン受容体(β1-AR,α2B-AR)の各遺伝子についても,promoter region及び,cording regionにおけるSNPsに着目し,日本人集団におけるこれら遺伝子頻度を明らかにするとともに,上記,神経生理学的応答性との関連を検討した.その結果,飲酒が及ぼすカテコールアミン分泌への影響には,COMT,PNMT遺伝子の多型が関与していること,心拍変動を指標とする自律神経応答性には,受容体の遺伝子多型が関与していることを示した(第35回米国神経科学会発表). さらにこれらのうち,promoter領域の遺伝子多型において,その機能的意義につき,さらなる検討を行うため,pGL3レポーターベクターへのサブクローニングを行った.
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